アマゾン売り上げ
1. 売上と利益の動向(2025年度実績)
2026年2月に発表された2025年度(1〜12月)の通期連結決算は以下の通りです。
- 売上高: 7,169億2,400万ドル(前期比12%増)
- 営業利益: 800億ドル(前期比 約1.7倍)
- 当期純利益: 777億ドル(前期比 約1.3倍)
- 日本事業の売上: 306億8,800万ドル(前期比12.0%増)。円換算では約4.5兆円に達し、2期ぶりに2桁増収を回復しました。
2. 収益構造の3つの特徴
現在のAmazonは、伝統的なEC事業に加え、高利益率なサービス部門が成長を牽引する構造になっています。
- クラウド(AWS)が最大の利益源:
- AI需要の拡大により、Amazon Web Services (AWS) の利益率が大幅に改善しています。
- 生成AI普及への期待感から、多くの企業がAWSを利用する流れが加速しています。
- 広告事業の急成長:
- 広告は、小売・AWSに次ぐ「第3の柱」として台頭しています。
- 購買データに基づく精度の高い広告提供により、極めて高い利益率を誇ります。
- 物流効率化によるEC収益の改善:
- 拠点配置の見直しなどのコスト削減策が功を奏し、かつて「薄利」だった小売部門の収益性が向上しています。
3. 今後の注目点と懸念事項
- 巨額のAI投資: 2026年12月期の設備投資額は前期比5割増の2,000億ドル(約31兆円)に達する見通しです。
- 投資家心理: AIへの巨額投資が利益を圧迫するとの懸念から、決算発表後に株価が急落する場面も見られました。
- キャッシュフロー重視: Amazonは伝統的に「利益」よりも「フリー・キャッシュ・フロー」を究極の経営指標として重視しており、再投資を優先する姿勢を維持しています。
アマゾンの売上構成比
2025年度(1〜12月)のAmazonの売上構造は、従来の「通販サイト」から「多角的なサービス企業」への転換を如実に示しています。主な内容は以下の通りです。
まず、最大の売上を占めるのは「オンラインストア(直販)」で、約2,693億ドル(構成比 約37%)を記録しました。Amazon自身が在庫を持って販売するモデルですが、成長率は9%に留まっており、成熟期に入っています。
これに次ぐのが、外部の販売業者を支える「サードパーティ販売支援サービス」です。手数料や配送代行(FBA)の収益からなり、約1,722億ドル(構成比 約24%)を売り上げました。直販よりも高い成長率(10%増)を維持しており、プラットフォームとしての存在感が増しています。
特筆すべきは、利益の屋台骨である「AWS(クラウド事業)」です。売上高は約1,287億ドル(構成比 約18%)に達し、生成AI需要を背景に約20%という高い伸びを見せました。
さらに、近年「第3の柱」として躍進しているのが「広告サービス」です。売上は約686億ドルと規模はまだ小さいものの、前年比22%増と主要部門で最速の成長を記録しており、極めて高い利益率で全体の収益を押し上げています。
このほか、プライム会費などの「サブスクリプション」(約496億ドル)や、ホールフーズを中心とした「実店舗」(約226億ドル)が安定した収益源として寄与しています。
AIがアマゾンへの売上に与える影響
アンスロピック(Anthropic)やOpenAIの売上拡大は、Amazonのクラウド事業(AWS)にとって、利益成長エンジンとなります。
1. インフラ利用料による直接的な売上増
AIモデルのトレーニングと推論には膨大な計算リソースが必要です。
- Anthropicの効果: Amazonは同社の「優先クラウドプロバイダー」であり、Anthropicの売上(2025年末時点で約90億ドル規模)の成長に伴い、AWSへのサーバー利用料支払いが直接的に増加します。
- OpenAIの効果: 2026年の戦略的提携により、OpenAIもAWSインフラ(2GW規模のTrainium容量)の利用を確約しており、これまで競合関係(Microsoft Azure専属)だった巨大需要の一部がAmazonの売上に還元されます。
2. 「自社製チップ」の普及と利益率の向上
Amazonは、高価なNvidia製GPUへの依存を減らすため、自社製AIチップ(Trainium, Inferentia)の開発に注力しています。
- コスト競争力の証明: AnthropicやOpenAIが自社製チップを採用することで、他の企業顧客に対しても「高性能かつ低コスト(Nvidia比で30〜40%のコストパフォーマンス改善)」であることを証明する強力な実績となります。
- 利益率の改善: 自社製チップの利用が増えるほど、Nvidiaへの支払いコストが抑えられ、AWS全体の利益率が向上する構造です。
3. 出資利益とエコシステムの囲い込み
- 含み益の拡大: AmazonはAnthropicに累計で巨額の投資を行っており、その評価額は2026年時点で約600億ドル規模に膨らんでいます。
- 再販手数料: AnthropicがAWS(Bedrock)を通じてAIモデルを他社に販売する場合、その売上の最大50%がAmazonに配分される仕組みもあり、AI市場全体の成長を吸い上げる体制を築いています。
アマゾンの成長し続ける株価
- AIインフラへの巨額投資: 2026年の設備投資額(Capex)が2,000億ドルに達するとの見通しが、短期的にはフリーキャッシュフローを圧迫するとして投資家の警戒を誘っています。
- AWSの再加速: 一方で、AnthropicやOpenAIとの提携によるクラウド需要の拡大が、今後の収益再加速につながるとの期待も根強い状況です。
- アナリストの評価: 依然として「強気(Buy)」の評価が多く、12ヶ月後の目標株価の平均は約295ドル(現在値から約38%の上昇余地)と予測されています。
アマゾンの成長
Amazonは「医療のデジタル化」を成長戦略の柱の一つに据えており、買収したPillPackを基盤とした薬局部門の強化と、日本を含むグローバル展開を加速させています。
1. PillPack(ピルパック)の現状
2018年に買収されたPillPackは、現在「Amazon Pharmacy(アマゾン・ファーマシー)」の重要なバックエンドとして完全に統合されています。
- 多剤服用者向けの強み: 1回分ずつ小分け包装するPillPack独自の仕組みは、高齢者や持病を持つ層に強力な利便性を提供しています。
- 物流網の劇的拡大: 2026年末までに、処方薬の当日配送サービスを全米約4,500の都市へ拡大する計画を発表しています。
- 名称の変更: サービス名は「Amazon Pharmacy」に統一されつつありますが、PillPackの技術とノウハウがその配送スピードと正確性を支える中核となっています。
2. 日本市場での展開
2024年より、日本国内でも「Amazonファーマシー」が本格始動しています。
- サービス開始: 2024年7月から、日本国内でのオンライン服薬指導・処方薬配送サービスを開始しました。
- 国内大手との提携: アイン薬局、ウエルシア、クオール、日本調剤など、国内大手薬局チェーン約2,500店舗以上と連携しています。
- 利用の流れ: Amazonアプリ上で電子処方箋をアップロードし、提携薬局によるオンライン服薬指導を受けた後、最短で当日〜翌日に薬が自宅に届く仕組みです。
3. 医療分野へのさらなる深化
Amazonは単なる「薬売り」にとどまらず、診察から治療までを統合する垂直統合モデルを目指しています。
- One Medical(ワン・メディカル)の買収: 2022年に約39億ドルで買収したプライマリ・ケア(初期診療)サービスを統合し、オンライン診療と対面診療のハイブリッド体制を構築しています。
- AIアシスタントの導入: 2026年1月には、医療従事者や患者をサポートする「Health AI」アシスタントを全米で展開開始するなど、最新のAI技術を医療現場に投入しています。
- ヘルスケア版プライム特典: 米国ではプライム会員向けに、月額5ドルで対象となる処方薬が受け取り放題になる「RxPass」を提供し、顧客の囲い込みを強化しています。
カイパープロジェクト(Project Kuiper)は、Amazonが展開する低軌道(LEO)衛星インターネットサービスです。現在は正式名称を「Amazon Leo(アマゾン・レオ)」へと改めており、競合するSpaceXのStarlinkに対抗するべく急速にインフラ整備を進めています。
1. 主な特徴
- 大規模コンステレーション: 地球低軌道に合計3,236基の衛星を配置し、世界中の未接続地域へ高速ブロードバンドを提供することを目指しています。
- 垂直統合と自社エコシステム: Amazonの物流網、AWS(クラウド)のインフラ、およびデバイス技術を融合。特にAWSとの連携により、法人・政府向けに低遅延なセキュア通信を提供できる点が強みです。
- 3種類のユーザー端末: 家庭用の標準モデルに加え、ポータブルな小型モデル、エンタープライズ・政府向けの高性能モデルなど、用途に合わせた端末を展開します。
- パートナー戦略: 自社販売だけでなく、NTTグループやSKY Perfect JSAT(日本)、Vodafone(欧州・アフリカ)といった通信事業者と提携し、既存ネットワークを補完する形で展開します。
2. 直近の動向(2025年〜2026年)
- 衛星打ち上げの加速: 2025年4月から本格的な量産衛星の打ち上げを開始し、2026年2月末時点で軌道上の衛星数は200基を突破しました。
- サービス開始予定:
- 2026年3月末まで: 米国、カナダ、英国、ドイツ、フランスの5カ国で先行サービス(ベータ版)を開始する計画です。
- 2026年末まで: 展開エリアを約26カ国に広げる予定です。
- 日本での展開: 日本国内では2026年度中に提供が開始される見込みとなっています。
- 規制当局との期限: 米連邦通信委員会(FCC)の認可条件に基づき、2026年7月までに全計画の半分にあたる約1,600基を打ち上げる必要があり、現在ロケット打ち上げのペースを最大限に引き上げています。
3. Starlinkとの違い
Starlinkが主に「個人ユーザーへの直接販売」で先行したのに対し、Amazon Leoは「企業や自治体、通信インフラのバックボーン(中継網)」としての活用をより重視したビジネスモデルを描いています
まとめ
このようにアマゾンはeコマース、クラウドビジネスや広告事業だけでなく、医療、通信、物流、決済事業でも収益を上げようとしています。
今後も事業の拡大が予想されます。
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